当イベントは、盛況にて終了しております。開催に伴い、多くの方々にご協力とご参加いただきましたことに厚く御礼を申し上げます。尚、開催内容の詳細は、以下をご覧ください。
パネラー
●キヤノンマーケティングジャパン株式会社
小沢学氏
●日本大学芸術学部教授
肥田不二夫氏
●株式会社電通国際情報サービス
渡邊信彦氏
司会者:まずは自己紹介を兼ねて、それぞれの事業(若しくは研究)と‘香り’との関わりについてお尋ねします。
渡邊:現在、拡張現実(AR)の一つとして、香りを感じることで違いやイメージがわかるので、コンピューターを使って‘香り’をどう体感していただこうかと模索しています。
肥田:私はデザインを手がけているのですが、ユニバーサルデザインの先にあるプロダクトとして、五感の中でも‘香り’を使った新しい何かが出来るのではないかと思い、取り組みを始めました。デザインをする上で、色々と解決しなければいけない問題がありますが、そこを“香り”という観点で見直してみることにより、新しい価値が生まれるのではないだろうかと思っています。今日はデザインの立場でお話させていただきたいと思います。
小沢:キヤノンはプリンタから出力されるOA用紙を取り扱っているのですが、ペーパーにどのような付加価値をつけるかについて取り組んでいます。今回の香りペーパーが生まれたきっかけは、とある会社からのクレームです。そこで、2008年にローズなどの香りを付けたペーパーが誕生しました。このような香りペーパーの目指すところは、B to Bなんです。あるいは、店舗での香り展開や拡張現実(AR)なども考えています。もちろん、国内の観光協会ともコラボもしております。
司会者:2011年9月の時点で、3名が感じるビジネス視点あるいは生活者視点での香りビジネスや製品、マーケティングに触れてみた感想や体験談をお聞かせ下さい。
小沢:2008年くらいから、‘香り’というものが盛り上がってきて、惹き込まれてしまいますね!これは間違いなくトレンドだと思います。ある時、雑誌を見ていたら、資生堂が尾道の桜の香りとコラボしていて、それ以降、地方ごとに別々の香りを作ったそうです。これはすごいなと実感しました。
渡邊:私はある会社の社長さんのお宅へお邪魔した時に、地下のコンピューター打ちっ放しで、ゴルフクラブを振ったら風が起きたように感じたんです。しかし、実際にはクラブを振ることで、芝の香りが漂うというフィルターが付いていたんですが、そのお陰で風が吹いている情景が見えるんですよね。その時に五感へ訴える体験をしました。あとは、友人で、80,000円で個人へカラーチャートを作る仕事をしている人がいるんですが、このようなことが商売として成り立つのかとカルチャーショックでした。恐らく、私の父親の世代までは、彼女が作ったカラーチャートに合わせて色を選んでいくという人はいなかったと思うが、今、周りにそういう人が現れたということは、だいぶライフスタイルが豊かになってきたことを実感しますね。だから、今度は自分の香りをチョイスして持ち物を持ったり、それを当たり前のように何種類も持つという時代が当たり前になるのかなと思います。
肥田;私自身が漠然と思っていることですが、五感の中でも香りは記憶の中に繋がっているんですよね。人間は視力や聴覚などが年をとる度に衰えていく中で、せっかくの人生なのだから、人間が持っている本来の能力をもっと使っていきたいですよね。五感の中でも特に嗅覚などを大事にしていきたいと思っています。
司会者:今回、会場へ展示されている製品についてご意見をいただきつつ、香りが今以上に大きな市場やビジネスとして、発展するかどうかお尋ねします。
肥田:‘香り’は大きく分けて、2つあるのではないでしょうか?例えば、アロマやお香のように香り自体を出すものと、香りを付加するものによっても違うと思います。そして、今回のアワードに選ばれた製品を例にお話しすると、『お香(お香りらく)』は、色々な香りを選ぶことができ、すごく進化しているなと感じました。「あろま名刺」入れは、名刺に香りを付けることで、単純に名前を覚えるだけではなく、その香りを嗅いだ時にその人のことを思い出すことが出来ます。香りというのは、心理的に良かった印象を思い出させてくれる。「ヒノキ丸」についても、わかっている事をきちんとやっているんですよね。そう考えると、ビジネスとしても楽しみではありますよね。
司会者:『+香り』というキーワードがありますが、2012年のヒット商品となるようなものがあれば教えて下さい。
肥田:やっぱり、この機能や形があるからこそ、この香りを付けることに意味があるんだと思いますね。だから、何かモノを作りました。そこに単純に香りを付ければ良いじゃないかということではないと思います。
小沢:実は香りペーパーについて、「香りがついている紙はいくらでもある」とつっこまれたことがあるんですが、やはり、キヤノンとしては旅先で撮ったキヤノンのカメラで撮った写真データを紙に出力して、その街の香り付きの手紙として投函してほしいという想いがあることを伝えました。
司会者:最後に、‘香り’は今後どのようになると思われますか?
渡邊:‘香り’をデータベース化することで、匂いを伝えられるように出来るし、一つの表現になると思います。とは言え、香りをビジネスにする前に自分たちでブームを作っていかないといけないと思います。香りのバラエティーを増やすなど、若年層にも広げられるようなビジネスを展開しつつ、消費者を踊らせるくらいの勢いが必要ですね。
小沢:実は昨年に開催されたイベントで、香りと資料が対になるようにして配布しました。我々はもっと紙を使っていただくために、コピー用紙だけではなく、FAX用紙やハガキなど地域限定の香りなどを提供していきたいと考えています。
肥田:私は、これまでに毎年、“香りで何か出来ないか”というテーマで学生から募ったアイデアを紹介すると、タイマー機能を使って香りで優しく薬服用の時間を知らせるピルケースや、結婚記念日に合わせて何となく香りで知らせたり、ヘルパーさんが来る時間を香りで知らせたり、起床時間になると空気が抜ける時に香りが出る枕、PCを立ち上げなくても香りでメール着信がわかったり、天候や気圧が下がると香りで知らせてくれる、歯医者の予約時間が近づくと香るカード、美術館などで展示品の香りをかぐことが出来たり、子供が泣くと母親の香りが漂ったり、試合前や試験前に指で擦るなどして神経を集中させたり、緊張をほぐす香りがあったり様々なものがありました。このように本来持っている機能と香りを合わせると、また新しい機能がプラスされるのではないでしょうか。とパネルディスカッションを締めくくった。