当イベントは、盛況にて終了しております。開催に伴い、多くの方々にご協力とご参加いただきましたことに厚く御礼を申し上げます。尚、開催内容の詳細は、以下をご覧ください。
高雄医学大学客員教授
吉岡亨氏
吉岡氏は、最初に「実は香りというのは、人間の五感の中で一番研究が遅れていて、ほとんど何もわかっていない」と紹介。「その昔、“クレオパトラのハナがあと3センチ低かったら、世の中は変わっていただろう”と言われていたが、このハナとはバラの花のことで、バラの香りでハエを寄せ付けず、男心を惑わせていた」と話すと、会場内から一瞬のどよめきが起きた。
現在、吉岡氏は台湾の高雄医学大学で客員教授を勤めているが、台湾は世界屈指のアロマテラピーブームであることを紹介し、その上で、「結局、アロマの効果というのは、五感との相乗作用でその効果が増していくと考えられている」と言及。つまり、香りというのは他の感覚とくらべて心理学的な側面が強いようだ。加えて、「香りというのは、鼻の粘膜や口の粘膜からも吸収されて、脳から身体全体へ広がっていくのだが、粘膜によって吸収される物質の身体全体への作用という研究は全く進んでいない。それこそが、香りの研究が進まないことの要因の一つであり、これらのことを取り扱うには、今の心理学はもちろん、分子生物学ですら力不足な部分がある」と語った。
続いて、吉岡氏は医療機器を使った香りの実験結果について紹介しながら、体内で香りがどのように作用しているかについて説明した。そして、人間のストレスをとりのぞく上で、一番重要なものとして“抗酸化酵素”の重要性を説いた。「人は、体温や血糖値や血圧や心拍数などが変わると、ストレスがかかる。ストレスとは、“活性酸素”による身体へのダメージと言っても良いのだが、エッセンシャルオイルのように良い香りを嗅ぐと、良く眠れるようなる。良く眠れるようになれば、ストレス解消にも繋がる」と話し、活性酸素によるダメージの仕組みについて語った。その上で、「最近、水素を溶かした水『水素水』が活性酸素によるダメージやストレスの軽減に効果があることがわかってきた。実際にNASAの宇宙飛行士に起こるストレス障害に対して、香りがついた水素水を飲ませる計画が進行中である。それくらいに有効性が認められている。水素水はしょせん水に過ぎないので、国内では薬事法をクリアする必要はない」と語った。
しかし、香りの脳内作用については、肝心なところはわかっていないそうだ。「香りによって活性化される受容体はたくさんあり、香り成分がどの受容体に働くかということまではわかっている。しかし、どこにある受容体がどういう割合で活性化されているのかがわからない。例えば、ストレス軽減にはハーブやローズマリー、レモン等の香りが良いとは言うものの、脳の鎮静化に係るプロセスはわからない。このわかっているところと、わかっていないところの混在が、研究の遅れにも繋がっている」と指摘。
最後に吉岡氏は、レーダーチャート法を使って香りを識別して合成し、その情報をインターネットで配信することで電気的に香りを発生させるという事例を紹介しながら、「香りの再生の原理はわかっているので、その仕組みを作ることは可能である」とし、香りが創るストレスフリーの社会へ対する可能性に言及した。